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「つみきのいえ」レビュー&解説&感想 | コロナ化の今こそ見たい映画

ふと、もうコロナ前には戻らないんだろな、と考えてゾッとする瞬間があります。
マスクの外れた日常はきっと戻ってくるのでしょうが、その世界はきっと、コロナ前の世界とは全く別物になるのでしょう。
そんなことを考えていると、ついつい昔の映画を見ることが多くなりました。

目に留まったのがこの「つみきのいえ」という短編映画でした。
水面上昇が続き、人々が家を「つみき」のように積み重ねた世界で、孤独になった老人。彼はひょんなことからダイビングスーツを着込んで海の中へ潜りますが、その中で、かつての暮らしを回想していきます。

Tanar

コロナ化で変わり果てた今だからこそ、皆さんに見ていただき作品です。

作品情報

タイトルつみきのいえ
ジャンル短編映画/アニメ
上映時間12分
監督加藤久仁生

ここから先はネタバレを含みます。
まだ見ていない方は鑑賞後にお越しください。ネタバレOKという方は、見てほしいけども、見て行ってどうぞ。

シーン① 老人の回想

お気に入りのパイプを階下に落としてしまった彼は、ダイビングスーツを着込み、水面に潜っていきます。「つみき」のように積み重ねた家を一段一段さかのぼる彼は、家族と過ごしていた過去を回想します。

回想はどれもほほえましいものです。病床の妻と慎ましく生活したこと、息子が思い人を連れてきたこと、息子を授かったこと、妻と出会ったこと、幼少のころ、そこには草原が広がっていて、同じくらいの子供と遊びまわったこと。素敵な思い出です。

それに比べて、現在の老人は廃れたように描かれます。病床の妻はとうになくなり、テレビとたまに釣れる魚だけが楽しみの孤独な生活を過ごします。一段一段潜っていくたびに、光は差し込まなくなり、あたりは暗がりになっていきます。

温かみのある音楽、映像のわりに、ひどく残酷な描写に見えました。
回想するたびに、映像はじわりじわりと暗く、廃れていきます。過去を取り戻すことはできません。回想するたびに、老人の心は憔悴していくように見えました。

回想の末、老人は最深部、始まりの家にたどり着きます。

シーン② 始まりの家で座り込む老人

始まりの家にたどり着いた老人は、木箱にどさっと座り込みました。
早く水面に上がらないと、ダイビングスーツの酸素がなくなってしまいます。そんな中で老人は、若いころの妻と過ごした記憶を回想します。

始まりの家の荒れようはひどいものでした。道中と異なり、窓が開いているため明かりがさしているのですが、荒れようをよりはっきり見えるような演出のように感じます。そんな中で佇んでいる老人は、死か生かの選択をしているように見えました。

妻をみとった後、孤独な障害を暮らしていた彼。そんな中、残酷にも思い出される温かな過去。思い出したなんてことのない過去は、彼にはキラキラした宝物のように見えたでしょう。

見終えて

クライマックスはなんてこともありませんでした。結局、最上段の家に戻った彼は、テレビを見ながら飯を食らいます。その光景は、随分明るく見えました。生死の葛藤があったのか、ただ思いふけっていたのか、声のないこの映画ではよくわかりませんね。

変わり果てた世界から見ると、思い出はあまりにも眩しく見えます。だからこそ今を強く生きていこうと思うし、何気ない現在がより愛おしく感じます。

いやはや、もう一度見たくなってきましたが、現在を生きていくので止めておきます(笑)

以上、映画のことはTwitterでつぶやいたのですが、140文字では収まらず、感情があふれて記事にしてしまいました。Amazon Primeで無料で配信されているので、見てねー。